僕は君を殺した後で、必ず自首するよ。
■ミリオンダラー・ベイビー
クリント・イーストウッド監督/米/2004/原題:Million Dollar Baby
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/10/28
- メディア: DVD
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アカデミー賞を4部門も受賞して話題になった作品らしい。
初見だったが、僕はこの映画、大いに不満だったな。
女ボクサー・マギーの家族が、まるで血も涙も無いような人でなしとして描かれている。
こんなの、リアルじゃない。
親だったら必ず娘の幸福を願う、と断言出来る訳でもないが、
あまりにキャラクターの扱いが雑過ぎる。
人というのは基本的にそんなに邪悪なものではなく、それぞれの正義を抱えているものだ。
対立は正義と悪の間で起こるのではなく、正義と正義との間で起こるのだ。
「諸悪の根源は〇〇である!」
〇〇には、ユダヤ人、米軍、日本政府、日教組、創価学会、在日韓国人、宇宙人などなどなど、
何でも代入可能だ。
「どこかに悪い奴が居て、だから俺は幸せになれないんだ」みたいなことをいう陰謀論者は
みな幼稚な人間だと言わざるを得ない。
僕がハリウッド映画をあまり好きになれないのは、
単純な善悪二元論や、勧善懲悪の幼稚なストーリーが
いつまでも幅を利かせているからかもしれない。
ダンは植物状態になったマギーを尊厳死させた後、姿をくらませて行方が分からなくなる。
僕は、そのラストにも不満だ。
尊厳死の問題は必ず、家族や恋人など本当に身近な人たちに還元されて来るはずなんだ。
尊厳死の問題は患者の死を以って終わるわけじゃない。
愛する家族をその手で殺し、あるいは同意、もしくは傍観し、
それでも彼らはその場で生きていかなきゃいけないんだ。
尊厳死というのはそういうものだ。
ダンはすぐに警察に自首するべきだった。
人殺しとして刑事責任を問われ、
またマギーの家族に起訴されて民事責任を問われ、
そして後ろ指を差されながら生きていくという道義的責任を負うべきなのだ。
それを一切放棄して、姿をくらますなんて!
それは果たして本当の愛なのか?
マギーをその手で殺したダンにも、その後の人生があるはずだ。
「その後彼の姿を見た者はありませんでした。エンドロール」!
これの一体どこで泣けと言うんだ。
君を愛してる。
僕は君を殺した後で、必ず自首するよ。
約束する。