今となっては信じられないけど、僕にも青春時代があった。

■青春残酷物語
大島渚監督/1960/日本

青春残酷物語 [DVD]

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青春を青春たらしめるものは何だろう。
若さ?無知?無謀?
貧乏?甘え?怒り?
孤独?独立心?自己否定?
社会情勢?時代の流れ?革命への憧れ?
体力の充実?肉体の美しさ?シナプスの発達?
セックス?精神の不安定?ホルモンバランス?
きっと全部なんだろうけど、一体、本質はどれだろう。


青春というのは、誰にとっても暗く、苦しく、哀しい時代だろう。
それを「明るく楽しい輝く時代」だと言っているのは、
自分の青春時代を忘れてしまったオトナだ。


今となっては信じられないけど、僕にも青春時代があった。
不器用で、自堕落で、ルール違反ばかりを犯していた。
無力で、傲慢で、何もかも両親に依存していた。
孤独で、周りの誰もをバカにしていて、セックスに明け暮れていた。
自分が無知だということも知らないくらい無知で、
何の才能も無いくせに、自分だけは特別だと自惚れていた。
自分がどんなに幸運で幸福なのかを知らず、不満ばかり言って、
現実味の無い夢物語ばかりと親しんでいた。
青春というのは、かようにも残酷な物語だ。


堕胎手術をした恋人の真琴が横たわるベッドの傍で、清は無言でリンゴを齧る。
彼はこんなとき、どんな言葉も無意味だと知っているのだ。
ただリンゴを食べてるだけなのに、恐ろしく残酷で、艶っぽい。
アダムとイヴが原罪の穢れを背負ったのもやはり、こんな瞬間だったろうか。