今、この国に必要なリーダー。

■THIS IS ENGLAND
シェーン・メドウス監督/2006/英

THIS IS ENGLAND [DVD]

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良かったなぁ。特に前半が良かった。


主人公のショーンはチビでいじめられっこ。
だけど、不良グループのリーダー・ウディーに骨があることを見込まれて、仲良くなるんだ。
ショーンは仲間に入れて欲しくて、必死にグループのメンバーの真似をする。
坊主頭にして、母親にドクターマーチンを買って貰う。


でもリーダーは言うんだ。
「ベン・シャーマンのシャツは?」
「え、無いよ」
「無いだと?冗談だろ?」
「無いと仲間には入れて貰えないの?」
「当たり前だろ!」
しょんぼりして、また出直すよ、と言うショーン。その背中に、ウディーは声を掛ける。
「おい、忘れ物だぞ」


そして彼に、ぴったりのサイズに誂えられたベンシャーマンのシャツがプレゼントされる!
ショーンは喜びを爆発させて、今日は人生最高の日だ!なんて言う。
あぁ、いいなぁ。思い出しただけで、目頭が熱くなる。



映画の後半は、ウディーよりちょっと年上の右翼の男が刑務所から帰ってくるところから始まる。
この愛国心の塊のような男は、外国人労働者を追い出す運動をしようと持ち掛ける。
そのせいで、グループのメンバーに亀裂が入り、リーダーのウディーとも疎遠になってしまう。


僕は「在特会」みたいな排外主義者、差別主義者は大嫌いなんだ。
でもこの映画を観て、彼らも弱くて、不安で、どこにも持っていきようのない怒りを抱えた
ちっぽけな人間なんだってことが分かる。
立場の弱い外国人労働者も、外国人に職を奪われた排外主義者も、みんな弱く、愛に飢えた存在なんだ。
彼らのことも愛してあげなきゃ、僕だって排外主義者になってしまう。


今、この国に必要なのはリーダーだ。
だがそれは進むべき道を指し示すリーダーじゃなく、弱い者に手を差し伸ばすリーダーなんだ。