快適で、安全な、閉鎖空間を抜け出せ。

バンディッツ
カーチャ・フォン・ガルニエ監督/1997/独/原題:bandits

バンディッツ [DVD]

バンディッツ [DVD]

荻窪のツタヤで見付けたものだから、思わず借りてしまった。
ブルース・ウィリスが出ている銀行強盗モノじゃなくて、ドイツ映画の方の「バンディッツ」ね。


十年振りに観た。
この映画が公開された当時、僕は大学生で、軽音サークルの先輩に恋をしていた。
何度か断られつつも、それでも諦めずにアタックして、何とか彼女を映画に誘い出したのだった。


十年ぶりにこの映画を観て、当時の記憶がまざまざと蘇ってきた。
あの時、映画の後で彼女が「泥セックスが気持ち良さそうだった」と言っていたことを思い出した。
今思えば、とんでもないエキセントリックな女だったんだなー。
僕自身、あくびが出るほどに凡庸な常識人だから(そうだよね?)、
いつもエキセントリックな人に惹かれてしまうんだ。



泥セックスかー。
掃除とか、シャワーとか、後のことを考えるといろいろ面倒そうだ・・・。
ジャングルに別荘でも買えば・・・でもワニとか出てきたら困るなぁ・・・とまで考えて、
あれ、何か違うな、ってことに気付いた。


彼女が泥セックスに憧れたのは、それが日常を越えて、我を忘れることができる行為だからだ。
誰にも見られない、快適で、安全な場所でやったって、全く意味が無い。


僕もいつかは泥セックスをしよう。
いや、文字通りの意味じゃなくて、「快適で、安全な、閉鎖空間を抜け出せ」ってことだ。




・・・ちなみに、同じ映画を観て、当時書いた文章は以下だ。
今読むと、自分で書いたとは思えない。
だが、当時の文章の方がいいなぁ。。

怖いけど欲しいもの


バンディッツ
監督・共同脚本:カーチャ・フォン・ガルニエ/1997/独


『生涯最良の日』に彼女と一緒に見た映画。


渋谷。彼女は就職活動の帰りだった。
スーツ姿なんか初めて見た。全然似合ってなかった。
雨が降ってきた。
彼女の持っていたピンクの傘に入って2人で映画館まで行った。


ストーリーは大したことない。
刑務所の中でバンドを組んだ4人の女性が機会を見て脱走する。
逃走しながら各地でライブをやるうちに人気が出てしまう。


「怖いけど欲しいものは何?」「・・・子供」
僕はそっと彼女の顔を見る。
「ルナはキスが怖いんじゃない?」「なんでよ、キスなんて怖くないわ」
隣に僕が座ってる事なんて忘れてるみたいだ。


映画を見終わった僕らはスペイン坂のレストランに入った。
僕はピザを切り分けてくれた彼女に話し掛ける。
「ねえ、『怖いけど欲しいものは何?』って質問、すごいと思わない?」
「うんうん」
「何かある?怖いけど欲しいもの」
「・・・・」
永遠かと思われるほどの沈黙のあとで彼女は言った。
「・・・・・・ユウヤ」


それが、彼女が僕の恋人になった日の出来事。
雨はもう上がっていた。


update:11/18/2000
(c)denden's boxxx!!!