この文章も、誰かの夢の中で書かれている。

筒井康隆「夢の木坂分岐点」1987

夢の木坂分岐点 (新潮文庫)

夢の木坂分岐点 (新潮文庫)

筒井の生涯のテーマのひとつは「虚構」だろう。
夢の木坂で電車を降りた主人公は、乗り換えた電車によって、それぞれの「虚構」へ入り込む。


夢を見ていた主人公が語り始め、語りの中で小説を書き、小説の中で映画に出演し、映画の中で公演を始める。
開かれたカギカッコは、決して閉じられることは無い。
虚構の中の虚構の中の虚構の中の虚構というわけだ。


読者は小説を読み終わっても、虚構から抜け出すことが出来ない。
むしろ自分が、虚構の中で生活していたことに気付くのだ。
そう、この文章も、誰かの夢の中で書かれている、ってことに気付いてた?