天皇制の否定なくして、左翼はあり得ない。

吉本隆明「改定新版 共同幻想論」1981

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)

国家、宗教、風俗、法律・・・それらは全て共同幻想である。
吉本は、全幻想領域の構造を、以下の3つに区切ってみせた。


(1)自己幻想・・・・・芸術・文学分野一般
(2)対(つい)幻想・・・家族・性関係
(3)共同幻想・・・・・宗教・法・国家


これら全幻想領域は、経済的範疇に対して相対的に独立しながら、逆転・進化する。


その理論展開や、解説に関しては膨大な量の研究本が出版されており、
僕などに新たな視座が見出せるとは思えないので、そちらに譲ることにする。


誰が読んでも明らかな通り、この著作は人間社会の作る幻想領域の詳細なる研究書ではあっても、
国家転覆を謀る陰謀書ではない。


しかし結果として、60年代の学生運動家・左翼過激派たちにとっては、
マルクスヘーゲルらの著作と並ぶ思想の教科書となった。


それは、天皇制の神話そのものを相対化しつくしてしまうという、破壊力を持っているからである。


天皇制の否定なくして、左翼はあり得ない。
共同幻想論は、天皇制の呪術を解くことで、
神国日本のカミカゼナショナリズム・右翼イデオロギーをも解体してしまった。