革命は自分自身と、愛する者と、弱い者の為に。
中島らも「お父さんのバックドロップ」1989
- 作者: 中島らも
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1993/06/18
- メディア: 文庫
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ロートル(年寄り)の悪役プロレスラーである「お父さん」が、最強の黒人空手家、通称"熊殺しのカーマン"に挑戦する。
リングの上で「お父さん」はマイクパフォーマンスをする。
おれはこのリングにたつのが大すきだった。二十何年間というもの、あしたはもうリングに立てないんじゃないかと、そればっかり考えてきた。
それがこわくて、毎日めちゃくちゃに体をきたえてきた。でもな、もういいんだ。
俺がここで勝っても負けても、あんたたちはすぐに、俺のことなんかわすれるだろう。
むかし、空手家と試合してボロボロになった、なんとかというばかなレスラーがいた、
くらいの話で、それもすぐにわすれてしまう。それもいい。
きょう、俺がここで戦うのは、たった三人の人間のためだ。
その三人さえおれのことをわすれずにいてくれたら、それでいい。
そのために戦う。それはおれ自身と、おれのカアちゃんと、おれのムスコだ。
革命はいつだって、自分自身と、愛する者と、弱い者の為に為されなければならない。