世俗と、楽園と、虚無を笑う画家。

荻野アンナブリューゲル、飛んだ」

ブリューゲル、飛んだ (新潮文庫)

ブリューゲル、飛んだ (新潮文庫)

「笑うボッシュ」、「ブリューゲル、飛んだ」、「ベティ・ブルーの世紀末ブルース」の三篇を収録する。
美術に詳しい人なら、「ボッシュ」や「ブリューゲル」という名前にピンと来るだろう。
世俗を描き、楽園を描き、虚無を描きながら、その全てを笑い飛ばしていたような奇妙な画家たちだ。


荻野アンナの小説は、その時間の無い奇妙な世界に、物語を通じて迷い込ませる。
解説するでもなく、賞賛するでもなく、代弁するでもない。
不思議を不思議として、謎を謎として、不快感を不快感として提示する。
そして迷い込んだ読者たちを、痛烈に笑い飛ばしているのだ。
怖ろしい作家だ。