尾を咥える蛇の秘密。

夢野久作ドグラ・マグラ」1935

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)


アンチミステリーの三大奇書の1つに数えられるそうだ。
「アンチミステリー」とは何か?
英単語「mystery」とは「秘密/謎」という意味である。
しかし、「ミステリー小説」とは、「秘密がある小説」ではなく、「秘密が明かされる小説」のことだ。
そういう意味で「ドグラ・マグラ」は「アンチミステリー」なのだ。
つまり、秘密は明かされない。


小説は尾を咥える蛇のように、円環的な構造を持っている。
本を閉じる時、読者は読み始めるのと同じ場所に戻ってくる。
しかし謎は明かされるどころか、前にも増してそこにあるのだ。
本の中にあったはずのミステリーは、僕らの日常にまで拡大される。
認識とは何か?記憶は何か?真実とは、存在とは、どういうことか?
頭で考えても答えは無い。なぜなら、「脳髄は物を考える処に非ず」。

胎児よ 胎児よ 何故躍る
母親の心がわかって おそろしいのか