死者とのコミュニケーション。

大江健三郎「死者の奢り・飼育」1959

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

死者の奢り・飼育 (新潮文庫)

人間は死者とコミュニケーションを取れる唯一の動物である。
もちろんイタコとか、心霊とか、そういう話ではない。
葬式をするのは人間だけだ、という意味だ。
生者は「儀式」を通じて、去り行く死者を見送る。
この場合の「儀式」とは、死者との語らいである。
その絶望的な立場の断絶こそが、コミュニケーションを成立させる。
小説を含む全てのコミュニケーションは、
死者との語らいが基盤となっているのだ。